AI に任せてよいこと・人が持つこと
生成 AI は、文章や画像を短い時間で作れる道具です。SNS 運用では、投稿文の下書き、言い回しの案出し、画像の挿絵、長い資料の要約などに使えます。白紙から書く時間が減るので、担当者がほかの仕事と兼ねている会社ほど助けになります。
ただし、AI が作ったものを出す責任は、出した会社にあります。AI が書いた文に間違いがあっても、AI が描いた画像が他人の作品に似ていても、公式アカウントから出した以上は会社の発信として受け取られます。使い始める前に、何を AI に任せ、何を人が持つかを決めておきます。
| 作業 | AI に任せやすい | 人が持つ |
|---|---|---|
| 投稿文 | 下書き、言い回しの案、長さの調整 | 事実の確認、出すかどうかの判断 |
| 画像 | 挿絵、背景、雰囲気の絵 | 商品・料理・施工の実物の写真 |
| 返信 | 決まった問い合わせへの返答の案 | 苦情、個別の事情がある相談 |
| 企画 | ネタ出し、切り口の案 | 何を伝えるかの決定 |
著作権:AI の生成物も、ふつうの作品と同じ物差しで見られる
文化庁は、生成 AI と著作権の関係について「AIと著作権に関する考え方について」(令和 6 年 3 月)を取りまとめています。そこでは、AI で作ったものを使う段階で著作権の侵害になるかどうかは、人が AI を使わずに作った場合と同じく、既存の作品との類似性と依拠性で判断すると整理されています。
類似性は、既存の作品と創作的な表現が共通しているかどうかです。アイデアや事実が同じというだけでは当たりません。依拠性は、既存の作品をもとにして作ったかどうかです。文化庁の解説では、利用者が既存の作品を知っていて、それと似たものを AI に作らせた場合は、依拠性があると考えられる例として挙げられています。
SNS 運用で気をつけること
実務に直すと、気をつけることは単純です。特定の作品や作家、キャラクターに似せるよう AI に指示しないことです。「〇〇風のイラスト」「〇〇のキャラクターのような」と頼めば、似たものが出てくる可能性が高くなり、依拠性も認められやすくなります。他社の広告やほかのアカウントの投稿文を貼り付けて「これと同じように書いて」と頼むのも同じ理由で避けます。
AI で作ったものが自社の著作物として守られるかどうかも、文化庁の資料で論点になっています。人が AI を道具として使い、創作の意図と創作への寄与があったといえる必要があるとされています。ロゴや看板商品のデザインのように、自社のものとして長く守りたいものは、AI に丸ごと任せない方が安心です。
AI の表示:SNS ごとの決まり(2026 年 10 月時点)
主な SNS は、AI で作ったり加工したりした内容について、表示の決まりを設けています。共通しているのは、本物のように見える動画・音声・人物が対象だという点です。
YouTube は、本物のように見える改変・合成のコンテンツには、アップロードのときに AI の使用を開示するよう求めています。実在の人物が言っていないことを言わせる、実際の出来事の映像を変える、現実に起きていない場面を本物らしく作る、といった場合です。美顔フィルタ、字幕、台本やサムネイルを AI で手伝わせる、アイデア出しに使う、といった軽い使い方は開示の対象外の例として挙げられています。開示を繰り返し意図的に怠ると、削除などの対象になることがあります。
Meta は、Facebook、Instagram、Threads で、AI を含むデジタル処理で作った写実的な動画や本物らしい音声に、AI のラベルを付けるよう求めることがあるとしています。画像はこの求めの対象外ですが、Meta のシステムが AI で生成・変更されたことを検知した画像にはラベルが表示されます。TikTok も、本物のように見える場面や人物が AI で生成されたか大幅に編集されたものであれば、ラベルを付ける必要があるとしています。
企業アカウントでは、そもそも本物らしい AI の人物や場面を作る必要がある場面は多くありません。実物を見せる場面には実物の写真や動画を使い、AI は挿絵や雰囲気づくりにとどめると、表示の決まりで迷うことも減ります。
事実の確認:AI はもっともらしい間違いを書く
生成 AI は、事実と違うことを、もっともらしい文で書くことがあります。営業時間、価格、日付、数字、法律や制度の説明などは、特に間違いが入りやすいところです。AI が書いた文は、出す前に必ず人が読み、事実に当たる部分を元の資料と照らし合わせます。
間違いを減らすには、AI に渡す材料を正確にしておくのが一番の近道です。会社の基本情報、扱っている商品、言葉づかいの決まりなどを文書にまとめて渡せば、AI はそれをもとに書きます。逆に、材料を渡さずに「うちの会社の投稿を書いて」と頼むと、AI はどこにでも当てはまる一般論か、事実でないことで埋めようとします。
一般論だけの文は読まれにくい
AI に材料を渡さずに書かせた文は、「〇〇は大切です」「ぜひ参考にしてみてください」のような、何にでも当てはまる文になりがちです。こうした文は読み手の手を止めません。𝕏(エックス)のおすすめの仕組みでは、中身の薄い投稿は「興味がない」を押されやすく、評価が大きく下がります。仕組みは 𝕏 のおすすめに載る投稿の条件 で説明しています。AI の下書きにも、その会社にしか書けない事実を 1 つ入れることが大事です。
入れてはいけない情報
AI のサービスに入力した内容がどう扱われるかは、サービスによって違います。お客さまの名前や連絡先、取引先との契約の中身、まだ発表していない商品の情報など、外に出てはいけない情報は入力しないのが原則です。社内で AI を使うなら、入力してよい情報と、いけない情報を決めておきます。決め方は 運用ルール・ガイドラインの作り方 で扱っています。
社内で決めておくこと
AI を運用に組み込むときは、次のことを短く文書にしておくと、担当が替わっても同じ使い方ができます。
- AI に任せる作業と、人が持つ作業
- AI に入力してはいけない情報
- 特定の作品や作家に似せる指示をしないこと
- AI が作ったものを出す前に、誰が何を確かめるか
- AI の表示が要る場面と、その付け方
特に 4 つ目は、承認の流れとして決めておくと抜けがなくなります。決め方は 承認フローの作り方 で説明しています。
SNS TOWN の AI の使い方
SNS TOWN の AI の下書き は、ここで挙げた注意を前提に作っています。AI が書くときに読むのは、会社・ブランドごとに登録した会社の情報、伝えたいこと、素材庫の資料だけです。一般論で埋めず、その会社の事実を入れて書くよう指示しています。
書いた下書きは、出す前に必ず検査を通り、人が承認したものだけが予約されます。承認の前に、事実に当たる部分を人が読んで直せます。参考アカウントの機能は、お手本にしたいアカウントの投稿から長さや書き出しの癖などの「型」だけを読み取り、本文の言い回しは写さない作りにしています。
AI の画像 は、素材庫に合う画像が無いときに挿絵として描くもので、文字、ロゴを入れないよう指示しています。商品や施工の実物は、素材庫の写真を使う前提です。どこまで AI に任せるかは、投稿サイクルごとに下書きモード(人が承認してから出す)と自動モードを選べますが、最初は下書きモードで始めることをおすすめします。
よくある質問
AI が書いた投稿だと、読む人に伝えないといけませんか
文章について、主な SNS は AI で書いたことの表示を一律には求めていません。各社が表示を求めているのは、主に本物のように見える動画、音声、人物です。ただし、どのように使ったかに関わらず、出した内容の責任は会社にあります。
AI で作った画像を投稿に使っても大丈夫ですか
特定の作品やキャラクターに似せていない挿絵や背景なら、使いやすい場面は多くあります。商品や料理、施工の事例のように実物を見せる場面では、実物と違うものを見せることになるので、AI の画像は使わない方が安全です。
他社の投稿をお手本にして AI に書かせてもいいですか
他社の文をそのまま貼り付けて「同じように書いて」と頼むのは避けます。長さや書き出しの作りのような型を参考にするのと、言い回しを写すのは別のことです。
AI に任せると、どこの会社も同じような投稿になりませんか
材料を渡さずに書かせると、そうなりやすくなります。自社の事実、扱っている商品、言葉づかいの決まりを材料として渡し、出す前に一次情報を 1 つ足すと、その会社らしい文になります。
自動で出すのと、承認してから出すのはどちらがいいですか
最初は承認してから出す使い方をおすすめします。AI が書く文の傾向が分かり、材料の書き足しで直す量が減ってきたら、決まった時刻の定番の投稿から自動に切り替える、という順番が無理がありません。
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